interview #1
社員が目覚める『大人の義務教育』です
(株)あいホーム代表 伊藤謙さん
社長と社員が同じ船に乗り、命をいただく漁業を体験。
地域密着型工務店の(株)あいホーム代表の伊藤謙さんは、
一緒に研修に参加した社員さんが「地域愛に"目覚めた"」と表現しています。
そうさせた研修の内容や研修後の変化についてお聞きしました。
◾︎ 氏名:伊藤 謙さん
◾︎ 所属・肩書き:株式会社あいホーム代表取締役
◾︎ 事業内容:宮城県内における住宅販売事業
◾︎ 蛤浜に初めて滞在した時期:2024年9月
▼石巻との関わり
私たち株式会社あいホームは、地域密着型工務店として
宮城県内8箇所に店舗を構え、住宅の製造、販売を行っています。
石巻にも店舗があるものの、以前の私は石巻にあまり詳しくなく、
どうにか石巻のことを知らねば、と
地域の方との接点を増やしていた時期がありました。
また、石巻市新館の当社所有の分譲地を生かし、
体験型住宅地「石巻マリンヴィレッジ」(以下:ヴィレッジ)を作ることが決まっていたので、
そのヒントを探し回ってもいました。
▼研修を受けた理由
はまぐり堂オーナーの亀山貴一さんと初めてお会いしたのは、
石巻市内の劇場で開催されたあるイベントの懇親会。
その際に「蛤浜で意味のある体験を提供したい」というお話を聞き、
ヴィレッジの構想も相まってぜひ体験してみたい、と。
一方で、以前カフェにも行ったことがあったので、
「なぜ人気カフェの営業日数を減らしてまで企業研修をやるんだろう?」
と不思議に思ったんです。
これは聞くだけではなく体験しないと分からない、と考え、
従業員と一緒に研修を受けることにしました。
▼研修参加メンバー
当日は営業メンバー(本部長、石巻店長、若手社員)と一緒に参加しました。
当社は地域密着型企業であり、地元愛が強いメンバーが揃ってはいますが、
知らないことも多いのも正直なところ。
「宮城県にはすごいものがあるんだぞ」という感動を、
私だけではなく社員と一緒に味わいたかったのです。
▼研修内容
まず貴一さんから半生や蛤浜の現状などの説明を聞き、
その後、マダコのカゴ漁を体験。
そのマダコを一緒に調理して亀山夫妻と食事をする、という内容でした。
文字にするとたったこれだけのことですが、
文字だけでは分からない学びや感動に溢れていました。
▼研修の学び
まず、海と山がかなり近い環境だからこそ、その関係性を五感で理解できました。
山に入って森や地表の環境なども詳しく説明してもらったおかげで、
「山が枯れると海が枯れる」の意味が腹落ちしたのです。
また、過疎地や里山の課題だけでなく可能性についても教えてもらい、
今までにない視点で自然環境に目を向けるきっかけになった気がします。
そして、震災で家族を亡くされながらも、
蛤浜の再生に前向きに取り組んできた貴一さんの強さを感じ、
「相当意味のあることをやっておられる」と知るには十分すぎる時間でした。
漁をして、それを調理して食べる体験も、無心になれてそもそも楽しかったですね。
この研修を機に私はマダコが大好きになったのですが、
飲みながら「タコっていくらでも食べられますね」と言ったのを鮮明に覚えています(笑)。
▼自社、自分の変化
当時はちょうどヴィレッジの構想段階だったため、大変参考になりました。
街を作れば家は売れる、という仮説のもと、
サーファーや釣り人向けの分譲地にすることは決まっていましたが、
実際にサーファーと出会う機会も少なく、焦りがあったのも正直なところ。
そんな中で、はまぐり堂の研修を受けたことで
「地域体験を提供しよう」という軸が固まりました。
「サーフィン以外にも"体験"と呼べるものがあるんだ」と学びましたね。
事実、ヴィレッジの宿泊オプションとして"石巻焼きそば作り体験"を盛り込んだほどです。
また、宿を"地域を知るメディア"と捉えられるようになったのも、この研修がきっかけです。
別のある方が、石巻を市街地・牡鹿半島・住宅地、と俯瞰して見ていたのが印象的で、
「住宅地を作る当社こそ街の玄関になり、街の面白いモノ・コトに接続する役割を果たそう」
と思うようになりました。
石巻の暮らしを体感できる体験型住宅地「石巻マリンヴィレッジ」。
▼社員の変化
日々の仕事の中で、一緒に行った若手社員に大きな変化が見られました。
研修以来、自ら考えて行動することが増えましたし、
自分の家を建てる際には地元の材を多く使ったそうです。
外国産の木材のほうが安価だと知っているはずの彼が、
地元愛に"目覚めた"結果、取った行動なのでしょう。
当時の話題になると思い出をいろいろ話してくれますし、
社長と一緒に体験して一緒に感動したことが良かったのだと思います。
▼研修の魅力
まずはやっぱり、自然と人のつながりを五感で学べることだと思います。
山と海が近いこと、海で獲れたものを"いただく"ところまで楽しんで学べることで、
「人と自然はこうして生かしあっているんだな」と腹落ちしました。
木材を使って住宅を作っている当社としても、
環境に対してなにかアクションしたいと強く思う出来事になりましたね。
また、貴一さんの説明があってこそ、この研修の意味がある気がします。
震災の経験を赤裸々に語りながらも、悲観しすぎず未来を明るく語る姿を見ると、
聞く側も生きる意味を考えますよね。
貴一さんが元々高校の先生だったこともあり、話がとても面白く、
こんな先生が学校にいたら良かったな、と皆さんも思うはずですよ。
▼研修をおすすめしたい企業
社員教育に力を入れている企業にはぜひおすすめしたいですね。
"生きる"を考える強烈な「一次体験」を共有することで、同じ言語を持って仕事に取り組めますし、
お互いのパーソナルな一面を見られることも良いのでしょう。
特に、社長との接点が少ない若手社員と一緒に行くことで、
良質な社内コミュニケーションの創出にもつながると考えています。
カルチャーの共有という視点で言えば、社員だけではなく
外部のパートナー企業と一緒に行くこともおすすめしたいです。
限定的な意見をお伝えしましたが、本当は全人類に受けてほしい
「大人の義務教育」だと本気で思っています。
◆ 編集後記
「社員と一緒に体験することが大事」としきりに語っていた伊藤さん。
職場から離れた環境で同じ体験をすることで、
社内での価値観の共有がしやすくなるのでしょう。
また、はまぐり堂で無邪気に楽しんだ体験のことを、
噛み締めながら話していた姿が印象的でした。
取材・文:角田尭史 (株式会社 midnight sun)