interview #2
『越境なんて』から『越境しよう』と呼びかけるように
  みなと銀行長田支店長 佐治孝輔さん

 

会社として実施している越境研修を「本音はすごく嫌だった」と語る佐治孝輔さんが、

蛤浜での体験を通じて、今や越境を社内外に勧めるまでに。

 

劇的ビフォーアフターと言える佐治さんの中に何が起こったのか、

何がそうさせたのかを詳しくお聞きしました。 

 

◾︎ 氏名:佐治 孝輔さん

◾︎ 所属・肩書き:みなと銀行(りそなグループ)長田支店長

◾︎ 蛤浜に初めて滞在した時期:2024年11月


できれば参加したくなかった越境研修

研修を受けた理由

 


私が所属するりそなグループは「越境」に力を入れています。

「いつもと違う世界を経験して、視野を広げてほしい」という理由で導入されている越境研修として、

全国の同世代のメンバーと地方滞在型の研修に参加することに。

 

私は新しい環境に行くのが好きじゃないので、最初はすごく嫌でした(笑)。

テーマごとに滞在先の選択肢がいくつかあったのですが、

どこも行かなくていいなら行きたくなかったのが正直なところです。

 

 

 

石巻、蛤浜の最初の印象

 

そんな中、石巻を選んだのは

「せっかくなら、金融の世界にいたら全く関わりのない世界(漁業、林業など)に触れてみよう」と思ったため。

 

約10人で2泊3日の研修を受け、そのうち一泊を蛤浜で過ごすプログラムでした。

 

研修での学びを、後日役員にプレゼンすることになっていたため、

「面白そうだけど、現実とかけ離れたことを経験してもモノにならないのでは?」

と半信半疑な心境。

 

また、蛤浜の話を事前に聞いた時は

「小さな場所で少人数で活動していても、何も起こらないのでは?」という気持ちもありました。

小さなアクションから大きな変化が生まれるのかも?

 研修内容

 

 

私は、2泊3日の研修の後半で蛤浜に滞在しました。

 

海でタコのカゴ漁をしたり、林業事業を営む「合同会社もものわ」の森夫妻から山の現状を聞いたりしたあと、

夜に亀山夫妻とお酒を飲みながら懇親しました。

 

私が住む神戸も震災経験地であるため、その話からより一層打ち解けたことを覚えています。

 

 

 

 

研修で印象に残っていること

 

 

まず、「山の環境の良し悪しが海にも影響する」という、海と山の関係性を初めて知る機会でした。

 

その中で、鹿などの害獣が増えて草が減るなど、山が悲惨な状況になっていること、

木を守るために小さな苗木を鹿柵で囲んでいることなど、

「世の中には知らなきゃいけないことがまだまだあるな」と思い知らされたと感じています。

 

 

一方で、そのような課題に前向きにアクションしている人たちの存在も

亀山夫妻からお聞きし、希望も感じる時間でした。

 

たとえば、漁業をアップデートする様々なチャレンジをしている

「一般社団法人フィッシャーマンジャパン」の存在など、「こんな人がいるんだ」と衝撃を受けました。

 

他にも、小さなアクションからどんどん仲間が増え、大きな動きになっている事例をいくつか聞くことで、

「ひょっとしたら石巻から何かが起きるかも」と研修前とは正反対の気持ちになっていましたね。

 

 それから、研修に参加したメンバーと初めて本音で話せた、

と思えたのが蛤浜での夜でした。

おかげで3日目のグループディスカッションも、

その後のプレゼン準備も、メンバーと近い距離で進められた気がします。

自分も越境し、他人も越境できるようなアクションが生まれた

 研修後の行動

 

 

プレゼンテーションの準備段階で行き詰まりを感じて、プレゼン直前に自腹で、蛤浜にもう一度行ったんですよ。

皆さんの活動について深く聞くことで、「そんなことまでしているの?」とまた新たな発見が。

 

実は、プレゼンが終わってからも何度も蛤浜を訪れており、そういった話を繰り返し聞く中で、

「自分も越境して何かしてみたい、手伝ってみたい」と思うように。

 

大きな組織で長く勤めている私としては、

少ない人数で始めたことがじわじわ広がっていくことにワクワクしたのでしょう。

 

 

また、私の感動を他の人にも知ってもらいたいと思い、友人や家族を連れて行くようになりました。

特に私の子供は大喜びで、子供たちの教育にとっても最高の場所だと思いましたね。

 

巻き込めば巻き込むほど面白いことが起こる、と石巻で学んだので、

自分なりのアクションとして、これからも人を連れて行きたいと考えています。

 

 研修前後の変化

 

 

大きな変化として、「仕事以外の時間を有意義に活用したい」と思うように。

その一例として、以前よりも勉強するようになりました。

 

石巻の現場で活躍されている方々はリテラシーが非常に高く、その影響からです。

 

「機会費用」という経済用語がありますが、今の私はお金を何に投資すべきか、を

常に意識するようになりましたね。

 

 

仕事においても、考え方に変化がありました。

 

企業への融資判断をすることも多く、

職業柄、「疑いの目」を持つようにしているのですが、

それに加えて「この社長さんを信じてみよう」とポジティブな目を向けられるように。

 

もちろん慎重な融資判断が前提ですが、

企業の取り組みをより前向きに受け止めようという気持ちが芽生え、

以前よりも貸す側・借りる側、

両方の心理的ハードルが下がってきている気がします。

 

もっと言えば、仕事以外のプライベートな活動であれば

「失敗してもいい」と思えるようになりました。

 

 

 

 

研修をおすすめしたい企業

 

 

官公庁や歴史ある大企業など、

しっかりとした基盤や規律を持つ組織の方々にこそ、

ぜひこの研修をおすすめしたいですね。

 

普段の業務とは異なる環境へあえて「越境」し、

理屈だけでは割り切れない現場のリアルやギャップに触れる経験は、

何物にも代えがたい刺激になるはず。

 

蛤浜の研修で得た現場感覚、自由な発想を

「エッセンス」として職場に持ち帰ることで、

組織に新しい風を吹き込み、内側から活性化させるきっかけになると思います。

◆ 編集後記 

 

「疑い」から「信用」に変わっていった、

というお話がとても印象的だった佐治さん。

 

 

私も会社を運営している身として、

佐治さんのような方に資金の相談ができると安心だな、と思いました。

 

後日談ですが、同僚から「石巻で一体何があったんですか?」と聞かれるほど

変化が大きかったようです。

 

 


取材・文:角田尭史 (株式会社 midnight sun)