interview #3
"ピュア"になれて新たな可能性に気づけました

 dada(株)代表 野村大輔さん

国内屈指のオフィスデザイナーであるdada(株)代表・野村大輔さん。

 

石巻や蛤浜に通うにつれ、

「"ストーリー"と"体験"が伝わる、自然と融合したオフィスづくり」

多くの企業に提供するように。


その背景や過程、蛤浜が持つエッセンスについてお聞きしました。

 

 

◾︎ 氏名:野村 大輔さん

◾︎ 所属・肩書き:dada株式会社代表取締役

◾︎ 事業内容:オフィスプロデュース事業

◾︎ はまぐり堂に初めて滞在した時期:2020年夏


30分でわかった「蛤浜の特別さ」

現在の仕事、取り組み

 


dada株式会社を2020年に設立し、ワークプレイスを軸に空間デザインを創造しています。

コロナウイルスが流行した2020年よりずっと前から「豊かな働き方」に関心を抱き、

「多様化する働き方に対するオフィスの在り方」を問い続けてきました。

 

実際、コロナ前から私自身もリモートワークを実践したり、

多層的なオフィス空間を複数のクリエイターとともに築き上げたりと、

「働くことへの満足度」を追求し続けています。

 

 

 

石巻との出会い

 

 

コロナが大流行し、

「さあ、これからオフィスはどうなる?」と試されている感覚もあった2020年。

 

以前からお付き合いのあったハーマンミラージャパンさんと、オフィスに関するコンペを企画していた際、

石巻で空き家活用事業を展開する株式会社巻組さんを紹介いただきました。

 

翌年が震災から10年というタイミングで、

かつ巻組さんも「石巻でワーケーションができる環境を作りたい」と言っていたため、

まずは行ってみようと、巻組さんを訪ねて石巻へ行くことにしました。

 

 

 

 

はまぐり堂との出会い

 

 

ワーケーションができる施設はいくつかあった方がいい、と

巻組さんに石巻市内の数カ所を案内していただき、その中の一つがはまぐり堂でした。

 

市街地に降り立った時は、よくある郊外の街だなと特に感想もなかったのですが(笑)、

蛤浜は「別次元の時間と空気が流れている」と感じ、スペシャルな場所だとすぐにわかりました。

 

絶妙に融合している人・自然・食、そして亀山夫妻の想いのこもった活動と人柄。

 

その時は30分しか滞在できず、言語化できないながらも

「この場所を他の人にも紹介したい」と思うには十分な時間でした。

 

実際、2週間後にクリエイター仲間を連れてすぐに再訪。

「どんな場所なの?」と最初は疑問ばかりだったと思いますが、

行ったらみんな感動してくれたのを今でも覚えています。

「オフィスづくり」で石巻とコラボレーション

 石巻の会員制コワーキングスペースづくりでの共創

 


一方、時はすでに2020年夏で、震災から10年である2021年3月11日まであまり時間がない状況。

 

何度か石巻に通う中で、「私のように通い続ける関係人口の存在が大事なのでは?」と考え始め、

巻組さんや亀山さんと「東京と石巻をつなぐ仕組みを作ろう」という話に。

 

しかし、石巻内で事業を完結させるのは難しいという課題が生まれ、

石巻外(特に東京)に目を向けて取り組む必要がありました。

 

その結果、2021年に生まれたのが、 

石巻市内の空き倉庫を活用した会員制コワーキングスペース『Third self』です。

 

ハーマンミラージャパンさんをはじめ、

国内外の家具メーカー・インテリアメーカー26社の協賛のもと完成。 

 

巻組さんは空き家問題、亀山さんは環境問題へのアクションがあり、

私は空間づくりという出口を持っていたため、全体設計という立場で一緒に作り上げていきました。

 

石巻内外の人が使いやすく、かつ「石巻の暮らし」にも触れられる

コワーキングスペース兼コミュニティとして、2026年現在も利用いただいています。

 

会員になると、はまぐり堂から海産物が年2回届くのですが、

そんなコワーキングスペースは他にないと思います(笑)。

Third self 会員用コワーキングスペース内観。

 オフィスづくりに「石巻エッセンス」が加わるまで

 

 

現在、dadaとして「ストーリーと体験を届ける」をテーマにしたオフィスづくりをしていますが、

大いに影響を受けたのが蛤浜という場所でした。

 

亀山夫妻とともに活動をしている『合同会社もものわ』の森優真さん・森佳代子さんに、

林業体験をさせていただいたことがあります。

 

木を切りつつ、森の現状や資材価格の仕組みなどを聞かせていただき、

私なりに解決策を考えるようになりました。

 

たとえば、国内の木材は中間業者の多さゆえに価格が高騰し、

大量生産ができて安価な海外の木材にどうしても手が伸びてしまいます。

 

それゆえ、国産木材への関心も薄くなり、

国内の林業事業者の木がタダ同然で使われる、という悪循環も生まれているそうです。

 

 

一方、私は以前からバイオフィリックデザイン(植物・水・自然光など自然の要素を

建物や空間に取り入れるデザイン手法)に力を入れており、

国内のワークプレイスデザイナーでは第一人者である自負があります。

 

ヨーロッパでは、バイオフィリックデザインを用いたオフィスの

ワーカーのパフォーマンスが向上した、という研究結果が10年以上前に出ているので、

根拠を持って私も取り組んでいました。

 

そこで、石巻の木材を東京のオフィスづくりで用い、

自然と融合したオフィスデザインに取り組むことにしました。

 

そのオフィスで豊かに働けるだけでなく、

オフィスができる過程や資材が持つストーリーを知り、

ひいては現在の地球環境に目を向けるきっかけになると考えたためです。

 

実際、クライアントを連れて蛤浜を訪れて一緒に木を切ることもあり、

「生産者とユーザーの距離を縮める」アクションができていると思っています。

 

都内のように、自然と融合したオフィスのニーズがある場所で石巻の木材を活用することで、

石巻の課題解決にもつながると考えてのアクションです。

 

「オフィスづくりを通じて人が豊かになる」という私のビジョンは、

今や蛤浜とともにあると言っても過言ではありません。

自分たちで木を選び、切り出して加工するまでを、現場で体感。

蛤浜の間伐材を都内のオフィスづくりに活用。

「非日常に近い日常」が新たなものを生む

 蛤浜の魅力

 

 

私にとって、蛤浜は「ピュアになれる場所」です。

 

都会だと様々なノイズに囲まれて小難しく考えがちですが、

蛤浜の「非日常に近い日常」を体感することで、今までにないクリエイティブが生まれると考えています。

 

また、少人数で過ごせること、亀山夫妻とじっくり話せることも魅力ですよね。

 

蛤浜やはまぐり堂の歴史、彼らの活動の背景をすべて理解するには数時間じゃ足りないので、

宿泊して飲みながら聞いてみるといいでしょう。

 

 

 

 

 蛤浜の価値、可能性

 

 

様々な体験を通じて学べることが価値なので、環境問題へのアプローチを考えたい企業や、

チームビルディングを強化したい企業にはおすすめしたいですね。

 

お金を払うからサービスをしてもらうのではなく、

フェアな関係で一緒に過ごして次のアクションを考えるという

「共助・共生」の感覚で過ごすと充実した時間になると考えています。

 

また、個人的には、はまぐり堂のような場所が全国に増えてほしいと思っています。

学びやクリエイティブが詰まっている里山は全国各地にありますし、

そういう場所が増えると日本全体も豊かになるはずです。

 

その意味でも、蛤浜、はまぐり堂から学ぶことは多いと思います。

 

 

◆ 編集後記 

 

 2021年にオープンした会員制コワーキングスペース『Third self』は

私も活用していましたが、野村さんの初石巻が2020年夏と聞いて驚きました。

 

クリエイターならではのノリの良さと、

石巻や蛤浜でなにか確信めいたものがあったのでしょう。

 

石巻との共創によって生まれた新しいオフィス像が、

日本全国に広がっていくのを楽しみにしています。

 



取材・文:角田尭史 (株式会社 midnight sun)